睡眠中毒
自分は睡眠が大好きだ。
大好きだからなのか必要だからしているのか分からなくなってしまうことがしばしばあるが、人間は何時間睡眠をとらなくてはいけないとかっちり決まっているわけではないので区別できたところであまり意味はないだろう。これ以上の睡眠は必要ないのでしませんとかここからは娯楽のために睡眠しますという選択をいつもいつもできるわけではないのだ。
ところで、自分は睡眠のどの要素が好きなのだろうか。睡眠が好きだといっても睡眠しているとき自体は意識がないので楽しんでいるかどうか分からない。もはや意識がないことが好きだと思われても仕方がないくらいである。自分は夢をあまり見ることはないし、見たとしてもいわゆる悪夢と言われるようなものばかりである。悪夢を見るのは何も楽しくない。では睡眠によって得られるものが好きなのだろうかとも考えたが、そうではない。睡眠後に楽しいわけではない。そこで考えられるのは睡眠に入る直前が好きだということである。これから寝るぞと意識しているとき、うとうとしているとき、このときが一番楽しいのである。楽しいという表現を今まで使ってきたが実は楽しいわけではない。むしろ気持ちいいのである。
自分は睡眠そのものが好きなわけではない、あたたかい布団の中で、がたんごとん揺れる電車の中で、机に向かって、うとうとする時間に感じるふわふわとした気持ち良さが好きなのである。
しかしこの睡眠前の気持ち良さをいつでも味わえるわけではない。睡眠に入ってしまうと意識がないことで味わえなくなるし、いざ寝ようと思っても全くもって眠くないときもあるし、疲れ切った時はうとうとするひまなく睡眠に陥ってしまう。
うとうとしている状況をつくり出して睡眠につかせないという機械があれば自分はその機会の虜になってしまうことだろう。
寝たいのに寝たくない。そういう睡眠が大好きだ。